Japan Swim Short 2005
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第80回大会プレビュー
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選手インタビュー
山本貴司

所属:近畿大学職員、イトマンSS
アテネ五輪:200mバタフライ 銀メダル
■金メダルという新たな欲が生まれてしまった
――引退はしないけれど、今回の日本選手権に出場しないのはどうしてですか?
山本「練習してないから、日本選手権に出られる状態ではないのです。アテネオリンピック、200mバタフライの決勝でゴールして電光掲示板を見た瞬間、まず感じたのが“クッソーッ!”あともう少しで金メダル取れたのにという悔しさだったのです。小さいころから水泳やってきて、オリンピックに出たいという夢を抱くようになって、その夢が実現したらメダルという目標ができて、アテネで銀メダルを取ってと、一つずつ夢をかなえてきたのですけど、2着だったことで金メダルという新たな欲が生まれてしまった。その欲が決して不可能なことではないと思えている間は挑戦しないではいられない。そういう性分なのです。
ただ、今年1年は職場で仕事を覚えたり、後輩の指導をしながらいろいろな勉強をさせてもらう期間に当てています。そうして、自然と“やりたい”という気持が起こったら、そのときから新たな目標に向かって挑戦を始めればいいと思っています」
――毎日ネクタイ締めて仕事しているのですか?
「そうですよ。昨年の10月から近畿大学で広報の仕事をしています。高校に学校説明に出かけたり事務仕事したり、そのあと水泳部の練習を見たり。もう少し慣れて自分のペースで仕事ができるようになれば、泳いだりトレーニングする時間も作れるようになるでしょうし、そうすれば新しい気持で水泳と向かい合うこともできると思っています。今、26歳ですから、次の北京オリンピックを目指すとなると30歳での挑戦です。水泳選手としてはかなりキビシイ年齢ですけど、それでもやりたいと思えるならがんばってみればいいじゃないかと思っています」
■日本の競泳はまだまだ強くなれる
――ところで、最初に日本選手権に出場したときのこと覚えていますか?
「高校1年生のときですね。あのときは日本選手権に出られるというだけでうれしかったですね。大会前日に移動するのですけど、大阪から東京に向かう新幹線の中から、“日本選手権だ!”と思うとドキドキしていたのを覚えていますよ。とにかく、日本選手権という大舞台でも自己ベストを出したいということだけ思っていました。
そのとき100mでB決勝に残って、ジュニアですけど、サンタクララへの代表選手に選考されたのです。初めて“JAPAN”と入ったユニフォームもらってね。それがうれしくて、遠征も楽しくて、次はジュニアじゃなくて本当の日本代表になりたいと思うようになりましたね」
――11年間、日本選手権に出場し続けてきたわけですね。
「日本の水泳選手は毎年4月の日本選手権を一つの目標にやっているわけです。オリンピックも世界水泳も、この日本選手権で結果を出さないことには代表になれないわけですから。だから、ある意味では日本選手権を節目に、僕たち選手は成長しているのかもしれませんね。競技者としてだけではなく、人間としてもね。
3歳から水泳を始めて、16歳で日本選手権に出て、18歳でオリンピック、26歳の3度目のオリンピックで銀メダル。その間ずっと水泳漬けの毎日ですからね、僕がこれまで学んできたことはほとんど水泳を通して学んできたことなのです。普通の人とは違った成長の仕方かもしれないけれど、僕はここで学んだ大切なことを後輩に伝えなければいけないなぁと、今、そんなことを考えています」
――今、日本の水泳はとても強いですよね。どうしてここまで強くなることができたのでしょう。
「いろんな人たちの努力の結果だと思います。コーチや監督、両親や家族はもちろん、水泳連盟やさまざまな競技会の関係者たちが重ねてきた努力のたまものでしょう。競技者をとりまく環境がよくなれば、いい選手も育ちやすいですからね。若くて元気のいい選手が出てくれば、そこで新しい競争が始まるわけです。日本選手権で競い、代表合宿で競い合うことで互いに成長することができる。今、日本の競泳選手はレベルが上がっていますけど、とてもいい状態で刺激し合いながら成長しているので、選手はみんな人間としても魅力的ですよ。この環境を向上させてゆけば、日本はもっともっと強くなれると思いますよ」
――山本選手が刺激を受けた選手は誰ですか?
「(北島)康介はじめ、いろんな選手から刺激をうけていますけど、同じ種目だから松田(丈志)君がいちばんですね。彼が出てきたとき“こら負けられん!”という思いは強かったですね。伸び初めの若い選手には勢いがありますからね。受けて立つほうは勢いを跳ね飛ばすだけの努力をしなきゃいけない。そう思ってこっちが頑張れば、向こうも負けじと追いかけてくる。むちゃくちゃシンドイですけど、そうやって刺激し合ったことで今の僕があるわけです。正直、松田君がいなかったら、銀メダル取れていたかどうかわかりませんよ」
■オリンピックの影響で日本選手権がレベルアップする
――なぜ長い間、苦しい練習やトレーニングに耐えてこられたのでしょう?
「目標を絶対達成してやろうという決意があって、何のために自分がシンドイ思いをしているのかをちゃんと理解できていたからです。どんなに苦しい練習でも、それは目標を達成するために納得して設定した壁ですから、その壁を乗り越えたら目標に近づくことがわかっている。だから負けない。絶対に負けない。
僕にとっていちばん楽しいのは、大きな舞台で泳ぐことなのです。特別な舞台、特別な場所で泳ぐことが僕にとって何より心地いいことなのです。その最高の舞台がオリンピックであるわけです。きれいなプールと大きなスタンドに満員の観客。今まで聞いたこともない大歓声の中に立ったとき、背筋にゾゾッと鳥肌が立つような感覚が走るのです。またここで泳ぎたい、ここで表彰台に立ちたい、メダルを取りたい、そう気持を起こさせる舞台ですね。ここでもう一度泳ぐためなら、どんな苦労だって耐えてやると思わせる魅力があります。
あと、僕の場合、オンとオフの切り替えがうまかったですね。練習の苦しさを私生活に引きずらないというか、友達と遊んだりすることでわりと簡単にリフレッシュができた。どんなに体が疲れていても、精神的にまいっているときは友達と遊ぶ。そうすると体の疲れは取れなくても、気持をリセットして翌日の練習に向かえるのです」
――山本選手の目から見た、今年の日本選手権の見どころは?
「種目に関係なく、男子の活躍に期待しています。オリンピックでも男子は勢いがありましたから、それだけに悔しい思いをした選手もいっぱいいるはずです。オリンピックで結果を出せなかった選手やオリンピックに出られなかった選手たちが、オリンピックで活躍した選手たちを追い越してやろうと闘志を燃やしていますよ。そういう選手がどれだけいて、どんな泳ぎを見せてくれるのかを楽しみにしています。
個人的には、100m自由形で、今年こそ50秒の壁をぶち破ってくれるのではないかと期待していますね。後輩の奥村(幸大)君もオリンピックでの貴重な経験を通して、大きく成長していますから楽しみです。
女子も柴田亜衣ちゃんが金メダルを取ったことで、全体的なレベルアップが期待できると思います。背泳ぎの中村礼子ちゃん、バタフライの中西悠子ちゃんあたりが安定した強さを見せていますけど、彼女たちを脅かすような若い選手の出現にも期待したいですね。何人かの新しい選手が出てくれば、今年の世界水泳、そして2008年の北京オリンピックも楽しみになりますからね」
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