JAPAN SWIM 2006
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大会の見どころ
競泳日本選手権 大会の見どころ
読売新聞東京本社運動部
吉見 光次
 今年は五輪開催年の中間年にあたり、世界選手権も開催されない。これまでの例にならうと、ともすれば「間延び」の1年にもなりかねないシーズンだ。ところが今大会に限っては、選手が士気を高めざるをえない、大きな状況の変化が訪れた。
 最大の要因は、南半球の豪州・メルボルンで行われる来年の世界選手権が、季節が逆転していることを考慮して3月開催となったためだ。さらに、今年の12月にもカタールでアジア大会が開かれるため、日本水泳連盟の代表選手選考も、例年より時期をずらすことを強いられた。その結果、今後1年間の代表入りを目指す選手にとっては、まず今大会で好成績を収めることが不可欠の条件となったのだ。
 代表入りに向けたポイントの一つは、水連が定めている国際大会派遣標準記録(以下派遣記録と表記)のI(=五輪等の主要大会でメダルが狙えるタイム)とI(=五輪等の主要大会で入賞が狙えるタイム)のうち、Iを突破して各種目の2位以内に入った選手は、1年後の世界選手権出場が実質的に内定することだ。ただ現実には、すぐにIを突破可能な選手は少ない。そこで次の段階として、8月にカナダで行われるパンパシフィック大会(パンパシで実施されない50m各種目の場合はアジア大会)の代表に選出されることが大切になってくる。パンパシへの出場権付与が予定されているのは、同大会実施種目で2位以内か、3位で派遣記録Iを突破、そしてリレー候補として選出された選手だ。ここでメンバー入りすれば、パンパシの結果次第で世界選手権の「切符」を手中にできる。
 逆に言うなら、今大会でパンパシ、またはアジア大会へ出場権を得られない選手は、北京五輪より前の期間で主要国際大会を経験できないことになり、世界の上位を目指すには大きなハンデを背負うことになる。そのため、今大会が選手やコーチの間で「今後2年を左右する」と、最重要視されることになった。
 このような背景下で、大切な一戦に臨む選手たちの近況を追ってみた。
【自由形】
 女子中、長距離で、柴田亜衣(チームアリーナ)の派遣記録I突破が期待される。昨年の世界選手権で出場した、400m(2位)と800m(3位)のタイムは、ともにIを切っている。1日目最初の決勝種目、400mを好タイムで泳ぎ、すんなりと世界選手権への「切符獲得第1号」となってほしい。800m、1500mの日本記録保持者、山田沙知子(コナミ東日本)は昨季不振に終わったが、米国滞在での独自調整から再起を図る。

 男子は、各種目とも世界トップとの距離は遠いが、短距離界の底上げは著しい。100mでは、昨年9月に佐藤久佳(日大)が日本人初の50秒切りに成功。前記録保持者の細川大輔(グンゼ)も2月に短水路日本新をマークし、「日本一奪還」に向け調子は上向きだ。中、長距離は、バタフライと掛け持ちで2年連続4種目制覇を成し遂げた松田丈志(中京大)が強い。男子高校生でただ一人、同選手権に出場した内田翔(セントラルスポーツ)も成長株。今月から法大に進学し、環境を変えてさらなる飛躍を図る。
【背泳ぎ】
 男女ともハイレベルの激戦必至だ。男子は昨年、すべての距離で日本記録が更新された。このうち、100mの森田智己(セントラルスポーツ)、200mの中野高(イトマン昭島)の記録は派遣記録Iを上回り、50mの宮下純一(ホリプロ)もIとほぼ差のないタイムをマークした。3人を軸とした力泳で、日本新ラッシュを期待したいところだ。

 女子も昨年の世界選手権で、素晴らしい成績を残した。200m銅メダルの中村礼子(東京SC)を筆頭に、伊藤華英(セントラルスポーツ)、中村真衣(JSS長岡)も入賞を果たし、層の厚さを世界に示した。東アジア大会で2種目優勝の寺川綾(近大)らも差なく続き、上位勢も油断はならない。多くの選手に代表切符獲得のチャンスがある中で、互いにしのぎ合って複数選手の派遣記録I突破を望みたい。
【平泳ぎ】
 昨年の日本選手権男子200mで、アテネ五輪2冠の北島康介(日本コカ・コーラ)がまさかの3着敗退を喫するという大波乱があったように、北島につられて男子のレベルは向上してきた。とはいっても、今年も北島優位の状況に変わりはない。常に世界の頂点を狙う彼にとって、出場全種目での派遣記録I突破は最低限とも言えるノルマだ。ひじの故障で日本短水路選手権を欠場するアクシデントはあったが、ぜひ貫録勝ちを見せてもらいたい。昨年北島を倒して200mを制し、勢いに乗じて世界選手権銅メダルを獲得した今村元気(ムラサキスポーツ)も日本一の座は簡単に譲れないところで、どこまで北島に食らいつくか、みものだ。

 女子は、6年前の日本選手権で田中雅美が作った日本新記録が、すべての距離で破られていない。今季からルール改正で、スタート時とターン後にドルフィンキックを1回打つことが可能になり、タイム向上への下地も構築されてきた。これに乗じて記録を伸ばす選手が待ち望まれる。200mで世界選手権4位の種田恵(神奈川大)や、同選手権代表の中村沙耶香(日体大)、昨年100mの高校新をマークした北川麻美(イトマン大教)ら18〜19歳の若手が、「ポスト雅美」として台頭してきてほしい。
【バタフライ】
 男子の200mが面白い。昨年の世界選手権で銀メダルを獲得した松田丈志が一歩リードするが、2月の日本短水路選手権でその松田を破って短水路日本新をマークした柴田隆一(チームアリーナ)、さらにアテネ五輪銀メダリストで、昨季を休養した日本記録保持者の山本貴司(近大職)も復帰してきた。世界トップでも通じる3人の激戦は、今大会最大の注目でもある。

 女子の200mは、アテネ五輪と世界選手権銅メダルの中西悠子(枚方SS)が優位で、ここは派遣記録Iを期待したい。ただ、同選手権の準決勝で、中西の決勝タイムより速く泳いだ矢野友理江(コナミ西日本)の躍進にも期待が持てる。24歳中西と17歳矢野による「世代対決」からも目が離せない。また、日本短水路選手権の50mで短水路日本新を出した19歳の加藤ゆか(山梨学院大)も、短距離では面白い存在だ。
【個人メドレー】
 世界選手権で2種目入賞を果たした、男子の佐野秀匡(アクラブ調布)と女子の藤野舞子(キャラノ)が、それぞれ一歩リードしている。
佐野は日本短水路選手権で、200m、400mとも短水路日本新をマークし、さらに力を伸ばしている。両種目の日本記録保持者ながら、昨季不振に終わった三木二郎(speedo)はどこまで巻き返しを図れるか、北京に向けて大きな試金石となる。

 藤野も同選手権の400mで短水路日本新を更新。今春拓大を卒業したが、より水泳に打ち込める環境が整い、さらなる飛躍も期待できる。


 日本水泳連盟の青木剛・競泳委員長は「世界から遅れている種目では、どんどん日本新を更新してほしいし、世界レベルに近い種目の選手は、遠慮なく世界選手権の内定をここで取っていってもらいたい」と、今後2年間の日本代表を占う重要な一戦に大きな期待を寄せている。
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