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文・折山淑美
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大会最優秀選手表彰式
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■次へつながる手応え
大会最終種目の男子200m平泳ぎ。150m通過まで自身が持つ日本記録の通過タイムを上回りながらも、北島康介のゴールタイムは2分05秒03。日本記録まで0秒04届かない結果に、観客席からは大きなため息が漏れた。
「シンドイですよ。死ぬかと思った。短水路はターンも多いから頭も回るし、何がなんだかよく分からなくなってしまいますよ」
北島もまた、ため息をついた。
初日の100mでは予選、決勝と日本新記録を連発したが、この日の200mは2月第1週にインフルエンザにかかり、練習ができなかったことが響いた。
「昨日の感じからいったら、もっと出てもおかしくないと思ったけど、きつかったですね。コーチからは前半は焦らずに行ってラスト50mが勝負だと言われてたけど、これだけ身体が動いてくれるとね……」
前日の100m決勝で出した57秒62の日本記録は、レベルの高い記録だった。世界記録は短水路を大の得意にするエド・モーゼス(アメリカ)が絶頂の頃に出した57秒47。アテネ五輪前の短水路ワールドカップで彼の強さを目の前で見せつけられていた北島にしてみれば、彼の記録にあと0秒15と迫れたのは、価値があることだった。その満足感が、この日も前半から速いペースで泳がせたのだろう。
「終盤でバテたということは、きちんとトレーニングを積めてなかったということですからね。短水路は泳ぎもストロークも難しいけど、泳ぎ自体は悪くない。インフルエンザというアクシデントがありながらもここまで泳げたのは、冬のトレーニングがちゃんとできていたということですからね。その意味では、辛い思いをして良かったと思います」
男子最優秀選手賞に輝いた北島は、厳しい戦いのなかで、次へつながる手応えを確認していた。
■不満からの大きな刺激
だが、同じアテネ五輪の金メダリストである柴田亜衣は、首をひねるシーンが多い大会となった。ここまでは自分の前半を速く入ることを目標にスピード練習をしてきた。この大会でも練習の疲労はあるが、前半の入りを速くすることを課題にした。
大会初日の800mでは、前半は切れのいい泳ぎでラップを重ねながらも、後半は失速して8分24秒49という結果に。
「前半から行こうとして気持を入れていくと、ちょっと後半がバテてしまうのかなと思ったから、もう少し気持を楽にしてうまく入って。その後は持久力の問題です」
と反省をした。だが、2日目の400mでは、前半から速く入ろうと思って泳ぎ出しながらも、100m通過は59秒86、200mは2分01秒99。前日の800mの入りより遅くなってしまった。「800mの入りより悪いっていうのは全然ダメですね」と反省する柴田は、その原因を800mの後半でバテてしまったイメージが無意識のうちに入りを遅らせていたのではないかと分析する。
「これからはまず、持久力を向上させなければいけないですね。それとともに、前半を速く入れるスピードも。その両方です」
という柴田は、満足できる成績からではなく、不満からの大きな刺激を受けたといえる。
■1カ月半後の決戦に向けて
この大会では2日間で、世界新記録2を含む18の日本新記録が誕生した。日本水泳連盟の上野広治・競泳委員長は「日本新記録二桁という目標を掲げたが、世界新を含む20近い日本新がでたことは、北京五輪シーズンの幕開けとしていいスタートが切れたということ。この形を4月の日本選手権でも再現してもらいたい」
と評価をする。
本当の勝負は4月15日からの日本選手権だ。そこへ向けて好成績を上げた選手は更なる上積みを目標にする。
また敗れた選手たちも……。
「バタフライでは前半の出足、150mまでが課題だと思ってやってきました。今回で前半には自信がついたので、これからは後半をしっかり追い込んでいきたいと思います」
激戦区の男子200mバタフライで、柴田隆一に敗れた松田丈志はこれからを見る。また、女子背泳ぎで中村礼子に2敗した伊藤華英は「改善しているストロークはだいぶスムーズになったけど、まだスピードが上がっていないので。200mに関しては2分3秒台を出したかったので悔しいけど、ここで悔しい思いができたことは、逆に良かったと思います」と、日本選手権での雪辱を誓う。
辰巳で行われた2日間の戦いはすべての選手に、あと1カ月半まで迫った戦いの場への決意を固めさせる試合になった。
折山淑美/Toshimi Oriyama
1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進−−栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。
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