世界水泳は24日からいよいよ競泳競技が始まる。昨年のアテネ五輪では、金3つを含む8つのメダルを獲得するなど、大活躍を見せた日本競泳陣。勢いをそのまま、このモントリオールにも持ち込めるかどうか、期待が高まる。世界水泳の代表選考会となった日本選手権から3カ月。日本競泳チームを率いる上野広治監督に、ここまでの調整、そして大会への意気込みなどを語ってもらった。
日本選手権終了後の4月25日、五輪金メダリストの北島康介(日本コカ・コーラ)、柴田亜衣(チームアリーナ)ら世界水泳の競泳代表選手35人が発表された。キャプテンは北島に決まった。チームは5月2日、まずはグアムでの初合宿に出発した。
「今年の場合、35人と人数が多く、さらに昨年のアテネと比べると、準備期間が約1カ月短い状況だったので、グアム合宿ではチームづくりプラス、泳ぎ込みのベースづくりを行いました。その結果、いい形でスタートを切れましたね」
一度日本に戻ったチームは、6月13日から米国での合宿に入る。同16日から開幕のカリフォルニア州でのミッションビエホ国際大会に出場した。
「ミッションビエホ大会は、レースの感覚を失わないということと、気候状況、辰巳と違って外のプールということで、シミュレーションを行いました。まずまず順調な状態をチェックできた連中もいましたが、それぞれまだ課題が残った状態で終えました。また、高地トレーニングに入るための時差調整という意味もありましたね」
日本チームの“賭け”
その後の4週間、日本チームは一つの“賭け”に出る。以前は長距離や個人メドレーの選手を中心に高地トレーニングを行っていたが、ここ何年間か、北島らも成果を挙げてきたということで、今回はチーム全体で高地のフラッグスタッフに上ることになった。
「この4週間は、9人のコーチで9つのグループに分かれて順調にできたという報告をもらっています。(山を)下りるタイミングというのも難しかったのですが、全員でとりあえずは下山しました。これはどうするか、今後の課題ですね。成果は、種目によって、個人によってそれぞれ出たので、この結果で評価はできると思います」
日本チームは時差調整のため、アリゾナからモントリオール郊外のシェルブルック大学に移動。約1週間、最後の調整をして、今月21日にモントリオール入りした。
「シェルブルックでは十分にスピードも上がってきて、疲れも順調に取れているということです。あとは気候が平年に戻るそうですが、その変化にだけ順応してくれれば、いい形でスタート台に立たせることができると思います。その意味で、ミッションビエホ大会に出たというのが、ここで生きてくる。オーバーコートも含めて持ってきていますので、何が起きても対応できる準備はしてきました」
“キャプテン”北島は準備万端
北島は19日、シェルブルックの直前合宿で実施したタイムトライアルで、自己の50m日本記録を上回る27秒69を記録するなど、順調な調整ぶりを見せた。モントリオールに入ってからも好調を維持。本人も「本当にここ数年にないぐらいトレーニングに手応えを感じている」と自信を見せている。
「(北島は)今年は日本選手権で皆さんの期待を裏切って、ミッション・ビエホ大会でも100mで日本人選手に負けるという屈辱を得ました。オリンピック以降、一番の目標になるこの大会で、200mに出られなかったという汚点を持ちながら、100m、50mに集中して結果を残すべく、本人の自覚も意気込みも、ここまで“さすがだな”という状況。あとは結果を待つのみですね」
北島は初日、男子100mの予選から登場。キャプテンを務めるだけに、いい泳ぎでほかの選手たちにいい風を吹かせたいところだ。
「初日から出る選手なので、チームをまとめるという役割よりも、自らチームを引っ張る泳ぎをしてくれることを期待しています。それには自己ベストや世界記録に近づくことが一番、キャプテンの役割を果たしたことになると思います。初日、2日目、3日目まではうまい形ですべり出せるかどうかは大きい。その意味では北島は決勝ではないが、初日に予選、準決勝、柴田が400mの決勝と、オリンピックメダリストが初日から続々いいスタートを切ってくれれば、初めて世界大会を経験する連中にもいい刺激になると思うし、その勢い乗ってくれればと思います」
真価が問われる柴田
一方、もう一人の金メダリストの柴田も「調子はいい。必ずメダルは取ります」と強気のコメント。北島と同じく初日、女子400m自由形で最初の泳ぎを見せる。
「金メダリストとしてのプライドを持っての初めての大会なので、真価が問われると思います。特に日本記録という、彼女自身の目標もあると思います。昨年はコーチとマンツーマンでしたが、今回は貴田(裕美)選手と一緒に練習も刺激になって、いい練習ができたと思いますよ。山田(沙知子)は学業の関係で別行動で、合流すること自体が少なかったですが、貴田と柴田の長距離の競い合いという点では、お互いにいい刺激になっていますね」
そのほかの注目選手の調子を、上野監督はどう見ているだろう。
メダルラッシュの再現狙う競泳陣
「女子背泳ぎの仕上がり自体は、中村礼子、中村真衣、伊藤華英、3人とも悪くない。中村真は50mだけで、伊藤と中村礼は100m、200mに出場しますが、どちらかというと200mが世界と戦える状態だと思います。2日目からの100mの出足がどうかで、200mのメダルの色が決まってくると思います。中村礼は銅より上の色が、必然的に目標になってきますね」
「森田(智己)は、昨年もメダルを取りましたが(アテネ五輪)、ギリギリの状態でした。今回も確実に取れる保証はないですが、でもメダリストとしてまぐれと思われるのもしゃくに触ると思う。彼にはこの4年間をかけて、100mも200mもという選手になってもらいたい。そういう意味ではいい試練だと思います」
「松田(丈志)は、種目は400mと1500mの自由形、200mバタフライに出場予定です。200mのバタフライに集中するでしょうね。メダルの可能性は高い。アテネの試練を生かしてもらいたい。予選と準決勝をどう泳ぐか、どういうコースどりをして、どれだけ余力を持って決勝で戦えるか。例えば後半型のレース展開で世界で通用するかというと、日本では通用しても難しい部分がある。前半速く入っても、後半つぶれてしまうこともある。そこをうまく、予選、準決勝で経験しながら、決勝で自分のパフォーマンスを最大限引き出せるかどうかですよね」
「今村(元気)は、北島が200mに出られなかったという責任を自分が果たそうという意識はあると思う。200mで北島の分まで頑張るという気持ちを結果に結びつけて、木村(太輔)選手と2人で決勝に残ってくれれば、いい形で役割を果たしたことになります」
上野監督が目指すメダル総数は6個。金の数までは言及しなかったが、メダルラッシュに沸いたアテネ五輪の再現を目指す。「アテネの勢いは続く」と言い切る上野監督。シンクロのように、序盤でいい流れをつくれれば、目標達成も十分可能なはずだ。 |